孤独死の増加と尊厳ある最期のために――「死後事務委任契約」という選択肢
- こうご行政書士事務所
- 4月12日
- 読了時間: 5分
更新日:5月2日
2025.4.12日経新聞記事https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUE1144T0R10C25A4000000/
2024年、日本国内で亡くなられた方の数は161万人。そのうち約5万8000人が「高齢者の孤独死」と警察庁による初めての集計でわかりました。
つまり、亡くなった方のうち約3.6%が、最期を誰にも看取られず、この世を去って行かれたということになります。
この数字は、今後さらに深刻化していくことが想定されます。超高齢社会を迎えた日本では、ひとり暮らしの高齢者が年々増加しており、「最期を誰が見届けるのか」という課題が、より現実的かつ切実なものになりつつあるのです。
この記事では、孤独死の現状と背景、そしてその課題に対する一つの解決策として注目されている「死後事務委任契約」について詳しく解説していきます。

郵便受けの異変からわかる「異常」
孤独死が発見されるきっかけは、意外にも日常の些細な変化です。
「郵便物が何日も溜まっている」 「玄関周りが荒れている」 「新聞がずっとポストに刺さったまま」
このような異変に気づいた近隣住民や郵便配達員などからの通報により、警察が現場に駆けつけ、初めてその方の死が確認されるというケースが少なくありません。
発見時には死後かなりの時間が経過すると、室内の損傷や近隣への悪臭など、物理的な被害も生じてしまうこともあります。残された部屋や家財道具の片付け、不動産の処分といった後処理は、多くの場合、行政(市町村)が行うことになりますが、対応に追われる自治体の負担も深刻化しています。
なぜ孤独死は起こるのか?
高齢者の孤独死の多くは、生前の社会的孤立が要因とされています。
高齢になってから配偶者を亡くしたり、子どもが遠方に行ってしまうなど、日ごろから連絡をあまり取っていなかったり、あるいはそもそも家族がいない方も少なくありません。退職後に人間関係が狭まり、近隣住民との交流も希薄になれば、何か異変があっても誰にも気づかれないという状況が生まれてしまいます。
人とのつながりが減り、定期的に様子を見に来てくれる人がいなければ、倒れても、亡くなっても、発見されるのはずっと先になってしまうのです。
今後さらに深刻化する「孤独死」の問題
日本は今後も高齢者人口の増加が続きます。2040年には65歳以上の人口が約4000万人に達し、全体の約35%を占めると推計されています。
このまま孤独死が増加すれば、以下のような社会的課題が顕在化していきます。
引き取り手のないご遺体の増加:身寄りのない方の遺体は、最終的に増すが、自治体の財政や人手を圧迫します。、自治体の財政や人手を圧迫します。独死が発生した住居はそのまま放置されることも多く、近隣の治安や衛生環境に悪影響を与え放置空き家となるケースも。
不動産の損傷や価値低下:遺体の発見が遅れることで室内が損傷し、売却や賃貸が困難になることもあります。賃貸物件の大家さんからすれば、高齢者に家を貸す事はリスクがあるので中々貸してもらえない。持ち家のない単身高齢者の行先がどんどん狭くなっていくことが予測されます。
なによりも本人の尊厳が損なわれる:誰にも看取られずに亡くなるだけでなく、死後の対応が不十分なままとなることは、故人の尊厳に関わる深刻な問題です。
尊厳ある最期のために:「死後事務委任契約」という選択肢
このような背景から、今後より注目されていくと考えられているのが、「死後事務委任契約」です。
これは、自分が亡くなった後の手続きや事務を、あらかじめ信頼できる第三者に任せておくための契約です。任せる相手は、家族、知人、あるいは専門職(行政書士・司法書士・弁護士など)でも可能です。
死後事務委任契約でできること
死後事務委任契約では、以下のような内容を依頼することができます。
死亡届の提出、火葬許可申請などの役所手続き
葬儀や火葬の手配
埋葬や納骨の手続き
病院や介護施設への未払い金の精算
賃貸住宅の退去手続きや原状回復
自宅の片付け・清掃・残置物の整理
ペットの引き取りやお世話の手配
親しい友人や知人への訃報の連絡
このように、死後に発生する「誰かがやらなくてはいけないこと」を、生前に契約によって準備しておくことができるのです。
なぜ今、「死後事務委任契約」なのか?
死後事務委任契約は、「死」を意識する事がなければ、なじみがない制度かもしれません。しかし、以下のような理由から、今後ますますその必要性と重要性が高まっていくと考えられます。
家族に頼れない人が増えている
行政の対応には限界がある
死後の混乱を防ぎ、本人の意向を反映できる
自分の最期に責任をもって備えるという考え方が広まっている
自分が亡くなった後のことを考えるのは、決して縁起でもない話ではありません。それは「自分らしい人生の締めくくり」を準備する、前向きな行動なのです。
死後事務委任契約を検討するタイミング
「そのうち考えよう」と思っていても、いざというときには準備が間に合わないこともあります。特に以下のような方には、早めの検討をおすすめします。
子どもや親族がいない、または疎遠である
将来のことを信頼できる他人に任せたい
ペットがいる
賃貸住宅に住んでいる
尊厳を大切にした最期を望んでいる
おわりに:自分の人生の終わりを「他人任せ」にしないために
私たちは、人生の始まりにさまざまな準備をします。学び、働き、家族を築き、日々の生活を大切に生きてきました。そして、人生の終わりもまた、大切に扱われるべき時間です。
「死後のことは誰かがなんとかしてくれるだろう」ではなく、「自分で準備しておく」という選択が、今後ますます求められていきます。
死後事務委任契約は、ただの手続きではありません。それは、あなたの生き方を反映し、最期まであなたらしさを大切にするための手段です。
尊厳ある最期のために。自分の意思を、未来へつなぐ準備を、いま始めてみませんか?
以上、孤独死の増加と尊厳ある最期のために――「死後事務委任契約」という選択肢でした。
孤独死の増加と尊厳ある最期のために――「死後事務委任契約」という選択肢
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